日本の森から

柱、梁、土台はもちろん、下地材、床材、窓枠材など、あらゆる木材を日本の山で育てられたものを使います。どうして国産にこだわるのか、理由があります。

戦後日本は焼け野原になったので、家を建てるための木材が不足しました。国は山に建築に適した杉やヒノキを植えるように政策を掲げ、林業家たちはこぞって植林しました。

ところが、途中で風向きが変わります。輸入木材をタンカーで大量に仕入れて住宅をつくる大手メーカーがシェアを伸ばし、それまでほぼ100%だった木材自給率が平成になると20%台となってしまいました。TPPで騒がれるずっと前から、林業は国際化の波にさらわれ、後を継ぐくともできない状況に陥りました。

この頃、若かりし私は間伐の手伝いをしていたのですが、林業家のおじいさんは「後継ぎの息子はいるけど、林業では生活できないので後は継がせられない。他で働いているので、下草刈りや皮むきの人手がない。ボランティアでもありがたい。」と話してくれました。

その一方で輸入材の産地では、長年森と共生してきた原住民や野生動物の居場所がなくなってしまうほどに根こそぎ伐採され、結果として地球温暖化を推し進めてしまいました。
東南アジア、ニュージーランド、ロシア、北欧と産地を移動しながら、地域によっては、元の姿にできないくらい破壊的な伐採が続けられ、日本に大量の木材が送り込まれ、何十年もかけて育った森はティッシュペーパーやコピー用紙や、2,30年という短い周期で壊される家になりました。

この間、林業では生きていくことが難しくなる中、放置される森が増えていきました。それでも僅かな支援などで、間伐(間引き)や枝打ち、下草刈りなどの手入れを続けてきた林業家の森が育ってきました。
採算が取れない中、代々続けてきたことがようやく再評価を受ける時代になってきました。

この木々を計画的に伐採して、お金に換え、それをもとに苗を植えていくことが林業を続けるために必要です。日本はほぼ7割が森林ですから、林業が元気になれば日本の多くの地域に雇用が生まれ、若い人も地域で山と寄り添って生きることができるのです。

また、森を計画的に手入れすることは、土砂崩れなどの災害防止にもなりますし、若い森ほど二酸化炭素をより多く吸収するので、地球規模の環境保全にもつながる意義ある仕事です。

日本は資源のない国と言われていますが、木材に関しては超豊富な「資源国」です。しかもこれは石油のように枯渇することのない、サステナブルな資源。
さらに日本は北欧などの森林国よりも温暖なので、成長が早いという利点もあります。

超微力ではありますが、1軒ずつでも国産材を使う人が増えることを願って設計しています。