「耐震診断」と「インスペクション」の違いって?

床下の木材にカビが発生
中古の木造住宅診断には、目的別に種類が分かれます。
①耐震診断=建物の立地、壁の量や配置、金物の有無等から、耐震性を診断
②インスペクション=床や壁の傾き、シロアリ、腐れ、基礎のひび割れ、雨漏り等の劣化を診断
①耐震診断
家全体の地震に対する強さを診断するのが耐震診断で、「一般診断」と「精密診断」があります。
イメージとしては、見える範囲だけで診断するのが「一般診断」、床下や屋根裏に入り込んだり、場合によっては一部壊したりして調査したうえで診断するのが「精密診断」となります。
よく自治体で無料耐震診断といっているのは、「一般診断」です。
これはざっくりと今の家の状態を知る事はできるので、いわゆる一般的な健康診断と考えるとよいと思います。
例えば、一般診断で「あなたの家は0.5です。」という成績になったとしたら、建築基準法で定めた耐震性を「1」とすると半分くらいですよ、という意味になります。
数値の意味は以下の通り。
0.7未満=倒壊する可能性が高い
0.7~1.0未満=倒壊する可能性がある
1.0~1.5未満=一応倒壊しない
1.5以上=倒壊しない
「ウチは危ないかも」と思ったら、具体的にどこをどう直したらよくなるのか、知りたいですよね。
その時に使われるのが「精密診断」です。具体的なリフォーム計画を作るときにはこの方法で設計します。
どこにどの程度の耐震補強を入れるべきかを検討するツールとして使うのが有効だと思っています。
※2025年4月の法改正で、これまで申請が不要だった木造戸建ての「大規模な模様替え」「大規模な修繕」(いわゆるリノベーション)も確認申請が必要となりました。耐震補強工事はこれに当てはまる規模になることが多いかと思います。この確認申請にも耐震診断を活用することができるというメリットもあります。
②インスペクション
インスペクション(既存住宅状況調査)は、今起きている劣化・不具合についての調査です。
自宅をリフォームする前や、中古物件をこれから買うときに、実際に役に立つことが多いと感じています。
雨漏り箇所を見つけたり、床の傾きの原因を探ったり、床下に溜まった水を発見したり、
シロアリ被害を見つけた場合に、具体的な劣化箇所と、状態を記録します。
劣化箇所を図面で表示しますので、リフォームを計画するのに役に立つ情報を得ることができます。
ただ、劣化を見つける「目」を養う必要があって、木造を専門にしている建築士でも、
新築が中心の場合は、劣化した状態を見る経験が少ないようです。
こればかりは、数を経験するしかないと実感しています。
こちらの診断は、「既存住宅状況検査技術者」が診断することが望ましいとなっています。
これも1日講習。私も持っていますが、やっぱり経験が一番大事だと思います。
耐震診断とインスペクションの違い
耐震診断とインスペクションは調査項目に重複している箇所があります。
例えば、壁や基礎のヒビ割れ、床の傾き、柱や土台などの腐れやシロアリ、屋根裏の雨漏りなど、見るべき項目は同じです。
耐震診断は、シロアリや雨漏りなどによる木材の劣化があれば点数が下がるよう考慮して計算されますが、劣化の起きていた具体的な箇所は記録されません。一方のインスペクションは具体的な劣化箇所を図示して、写真と解説付きの記録が残ります。
ですので、築年の古い家の場合はインスペクションも併用する方が、無駄な工事を避け、効果的に補強ができると考えています。