中古の木造住宅診断「インスペクション」とは?
中古の木造住宅診断には、目的別に種類が分かれます。
①耐震診断=建物の立地、壁の量や配置、金物の有無等から、耐震性を診断
②劣化診断=床や壁の傾き、シロアリ、腐れ、基礎のひび割れ、雨漏り等の劣化を診断
①耐震診断
よく自治体で補助金がでるのは、①の耐震診断のほうですが、
マニュアル的にソフトに入力して診断結果を出すようなことになっているので、
木造の設計が専門でない建築士でもできるようになっています。
実際、1日の講習会で診断資格が与えられます。
私が実際に携わった大規模リフォームでは、事前に耐震診断を受けたとのことで、
その報告書を見せてもらったのですが、首をかしげてしまうような内容でした。
実際はいろいろな構造が入り混じった増改築を繰り返した家なのに、
それを無視した内容で、判定結果を出していました。
つまり「入力項目がないから、存在しないものとする」ということらしいです。
もちろん、木造を熟知した建築士も診断されているかと思いますし、
診断結果を見て、「うちは手直ししなくちゃ」と思い立つきっかけになります。
また、耐震診断には、壁などを壊さない「一般診断法」と、壊して調査する
「精密診断法」がありますが、買う前に中古住宅を壊して調査することは難しい場合がほとんど。「一般診断法」では、乏しい情報での診断となるので、 実際にリフォーム計画を立てるのには、あまり実用的ではないと感じます。
特に築年30年を超えているような建物は、現在の法律ではほとんど耐震性がないと判断されるものが多いので、リフォーム設計をするときには、後述の劣化診断と合わせて、どこにどの程度の耐震補強を入れるべきかを検討するツールとして使うのが有効だと思っています。
②劣化診断
②の劣化診断は、自宅をリフォームする前や、中古物件をこれから買うときに、
実際に役に立つことが多いと感じています。
実際に、ここ2,3年で50件以上の劣化診断をしてきましたが、屋根裏に入って
雨漏り箇所を見つけたり、床の傾きの原因を探ったり、床下に溜まった水を発見したり、
シロアリ被害を見つけることができたりと、リフォームを計画するのに役に立つ情報を
得ることができています。
ただ、劣化を見つける「目」を養う必要があって、木造を専門にしている建築士でも、
新築が中心の場合は、劣化した状態を見る経験が少ないようです。
こればかりは、数を経験するしかないと実感しています。
こちらの診断は、「既存住宅状況検査技術者」が診断することが望ましいとなっています。
これも1日講習。私も持っていますが、やっぱり経験が一番大事だと思います。
標準プランのインスペクションはこちらの劣化診断を重点的に行います。