体にいい家、環境に負荷の少ない家を目指すようになったのは、
子供時代の経験が大きいと感じています。
幼い頃からゼンソク持ちだった私は、夜中の発作で度々かかりつけの病院へ駆け込むことがありました。
鬼ごっこなんかすると、てきめんに発作が起きてしまうので、
部屋からみんなが遊んでいるのを眺めているような子供でした。
そんなアレルギー体質で虚弱な私に、顔が青ざめるほど強い抗生物質を使い続けることを心配した両親は、漢方の薬草を毎日煮出してくれました。
不思議と漢方薬は嫌でなく、そのおかげか、体は元気になっていきました。
また、転勤族でしたので、3年毎に各地を転々したことが、家に興味を持つきっかけになりました。
いろんな土地でいろんな家に住むうち、間取りや家具のレイアウトを考えるのが大好きになりました。自分の家では飽き足らず、広告で入ってくる売家の間取り図にアイディアを書き込むのが趣味に。
そんなバックグラウンドを持っていたせいか、「建物の素材とアレルギーに関係がある」という話を聞いたとき、引越し先によって、発作が出たり、出なかったりすることとか、デパートに行くと頭が痛くなって買い物どころではなくなるといった体験の謎が解けていく気がして、どうしても深く知りたくなり、この世界に飛び込みました。
あれほど「知りたい」と思ったことは、それまでなかったかもしれません。
子供の頃の夢は「小児科医になってゼンソクの子供を直してあげること」でしたが、
アレルギーが環境によって改善したり、悪化したりするならば、長い時間を過ごす家の素材は、食べ物と同じくらい重要なのではないか、
それによって人を元気にすることができるなら、医者にはなれなかった自分でも、少しはアレルギーの人のためになることができるのではないか、
そんな思いでこの仕事を続けてきました。
アレルギーと縁がない方の家であっても、最終的に家が解体され廃棄されても、水や空気を汚さない、自然に還る素材をできるだけ使うことで、
未来のアレルギーの子どもたちを減らすことにつながればと思っています。
伊藤有吉子