ウチのリノベ【リノベするなら昭和の家】

在来工法はリノベ向き

私たちが中古探しで第一条件にしたのは、「古民家でない、在来工法の家であること」。
在来工法というのは、簡単に言うと昭和、特に戦後の昭和からの家のスタンダートな作り方です。
いわゆる「茅葺きの古民家」ではなくて、基礎は一応コンクリートになっていて、土台の上に柱が立っています。

古民家は、コンクリの基礎はなくて、自然石の上に土台や柱が乗っかっている作り。リノベーションするのには、まずジャッキアップして家全体の基礎を作るところからになるので、大がかりな工事になりがち。そうした古民家は私たちにとってはあまりに素晴らしくって、「文化財保存」的な責任を感じてしまい、自分の好きなように遊ぶという目的には合っていませんでした。
その点、在来工法は今もスタンダードな作り方。普段私自身が設計している工法と基本同じなので、補強方法とか、柱の移動もしやすく、私たちの目的にはピッタリでした。それに、リノベに必要な資材が手軽に手に入ることもリノベ向きと考えました。

国産材が当たり前だった時代

特にここ南アルプス市に来て、昭和50年代のいわゆる「木造モルタル瓦葺き」の家がたくさん残っているなあと感じます。お若い方にはすでにこれが「古民家」と映っているみたいですね(笑)。
ウチも昭和50年代の家。このあたりの人の話だとこの時代はまだ、近くの山で伐りだしたヒノキや松を使って家を建てるのがごく普通のことだったそう。
その後あっという間に外国産の材木が押し寄せてきて、100%だった木材自給率が20%にまで落ちていきました。私がこの仕事を始めたころ、国産材を使う家はとてもレアな存在になっていましたが、今年に入ってから、海外の木材が入ってこなくなる「ウッドショック」が起きて、急に国産材の争奪戦が起きるなんて、皮肉なことです。

ところでウチの家の屋根裏にも、地元で伐りだされた松の丸太が使われていました。
天井裏に隠れていたのですが、下見のとき天井裏を覗いて、この松丸太を発見。
まだこの家にするかどうか迷っていたのですが、この丸太を見たときに「天井を外して、リビングからこの丸太を見上げたらいいだろうな~」とイメージが湧いてきました。

大工さんの墨書きが残る松の丸太梁


これは余談なのですが、この家に決めたもう一つの理由は住所でした。
転勤族の子だった私は、新しい住所や電話番号を語呂合わせで覚える習慣がありました。
ウチは「有野2549番」なのですが、これが「アリノ ニッコーヨク」と読めたとき、
私の脳裏には黒いアリがリクライニングチェアに座って、富士山を眺めながら日光浴をしている絵が浮かび、「この家に住むといいよ」と言われている気がしました。

絵:イトウタカシ