リノベーションの法改正のこと

今住んでいる家を地震に強くしたい、寒い家をどうにかしたいなど、家全体を直したいとき、大規模リフォームすることをリノベーションと呼んでいます。

TVでも見たことあるような、骨組みだけにして生まれ変わらせるリノベーション工事は普通の家なら法的な手続きが必要ありませんでした。

ところが今回の建築基準法の大改正で、2025年4月からはリノベーションにも新築と同様の手続きが必要となりました。工事をする前の「建築確認」と完成時の「完了検査」を受けることが最低限必要となります。同時に建築士の設計・監理が必須となりました。

これによって、建築業界では「リノベーションがやりにくくなるのでは」「法律に適合するための工事がコストアップにつながる」とマイナスなムードが流れているようです。

もちろん手続きが必要ないからといって、法律に適合しなくてはならないのは昔も今も同じですが、検査がないので事実上野放し状態になっていたわけです。

さて、法的な手続きが必要になると、建て主としてはどのようなメリットやデメリットが出てくるでしょうか。

まずはメリットから。

  • 家がきちんと法律に合ったものになる
  • 必要のない工事をされないで済む
  • 法的な状況を確認できるので、売買しやすくなる

リノベーションをしている施工業者さんの中には法律を知らないで施工しているケースが見られます。根拠のない工事をされないためにはこうした法的なハードルがあることは安心につながるでしょう。

次にデメリット

  • 法的手続きが煩雑になる
  • 新築時の書類がない、検査を受けてない建物などの場合、原則すべてを現在の法律に合わせて直さなくてはならないため、コストが大幅に上がる可能性がある。

実は、このような書類のそろっていない建物は、住宅のような小規模建物ではとても多いのです。
例えば27年前の平成10年では約7割が完了検査を受けていません。これは通常、完了検査を受けないと使用が許可されないところ、住宅のような建物については使用、つまり入居が許されていたということがあったせいかもしれません。

ただし、国はその状況をよく知っていて、杓子定規にすべて今の法律通りにせよ、とはしていません。条件によっては、当時の法律に合っていれば、そのままでもいいですよという救済策があります。これが「緩和措置」と呼ばれるものです。

この「緩和措置」を受けるにはいくつかステップがあります。

以前から「増築」についてはステップが設けられていたいのですが、書類のないものについてはなかなか高いハードルでした。

今回の法改正では、増築もリノベーションもステップのハードルが下がってきました。

具体的にはまず「現況調査」というのをします。これまでは指定検査機関しか調査できなかったのですが、非常に高額でしたので、現実的ではありませんでした。

この調査を建築士ができることになり、リノベーションの設計と共に進めることができるようになります。

正直いうと、始めこの法改正を知ったときは「リノベーションのコストがアップするだろう。そうなるとせっかくの建物が生かされなくなって放置されてしまうのでは?」と心配していました。空き家問題がこれだけ大きくなっている中、このような厳しい法改正は空き家の放置につながるのではないか、そういう懸念もあります。

けれどもこれまでいろんな方の中古の売買に立ち会ってきて、「この家大丈夫かな」という不安いっぱいの買主さんにとっては、家の状況がしっかり把握できるというのはよいことです。空き家=ストックを活かす方向に日本が進むには、中古の建物を安心して住める、引き継げる、そして正当な価値で売買できるものにすることはやはり必要なのかもしれません。

この改正を機に、新築も中古も、手をいれて育てていくような文化が根付く方向に進めばいいなと思っています。