パッシブなエネルギー

省エネ住宅には、大きく分けて2つの方向があります。
1つは、太陽光発電や高効率の給湯器、エアコンなどの設備を導入する「アクティブ」な省エネ。
もう一つは、建物自体の作りを工夫することで、太陽の熱や光、風をそのままの形で利用する
「パッシブ」な省エネ。
例えば、屋根に降った雨を地下に貯めて使う「雨水利用」、
屋根に土を入れて植物を生やすことで屋根面が熱くなるのを防ぐ「屋根緑化」、
南からの日射を取り入れて床面に蓄熱して温める「ウィンターガーデン」、
建物の壁際を流れるわずかな風をとらえる「ウィンドキャッチャー」、
窓の高さと配置で落差を付けることで自然に熱を外に逃がす「重力換気」等々。

アクティブの場合、メーカーが作ったものですので、省エネ効率が数字で明記されています。ここ数年耳にするようになった「ゼロエネルギーハウス(ZEH)」の計算が簡単なので、ハウスメーカーは、家電メーカーと組んでこの仕組みを省エネ住宅の主流にしようとしています。
国(というか経済産業省)も省エネ法で今後すべての住宅を省エネ設備のあるものにしようとしていますので、好む好まざるにかかわらず、この流れは止められないものになるでしょう。

一方パッシブの場合は、その場所の太陽の当たり方や、季節ごとの風の向き、周辺の環境などによって、手法を組み合わせる必要があるため、どこでも同じようにはできませんし、数字にすることもなかなか難しいです。

両者の大きな違いは、2つ。
1つは、寿命です。アクティブな設備は10年とか長くとも20年程度で使えなくなりますが、パッシブの仕組みは、家そのものの寿命と同じです。
2つ目は、コストです。アクティブな設備は初期投資が大きく、点検やメンテナンスをきちんとしないとメーカーのいうような省エネ効果は出ません。パッシブはそのためだけに費やす費用はごくわずかで済みますし、メンテナンスはふつうの家のお手入れと同じです。
アクティブな設備はメーカーさんの努力によって素晴らしい技術だと思いますが、
もっと長い視点で住み継ぐ家をつくるためには、できるだけパッシブな仕組みをベースにしていきたいと考えています。